まめのんきの猫背日誌

マメにノンキにやりたいと願う、都祁の自然食品屋まめのんき店主の些事争論な日々。

栗のジレンマ

秋の味覚の中で

『おいしいんやけどね…』という肩書きを持つのは

栗。

 

時間の合間を見て栗を拾い、

『オマエ、痛ってぇな!!』とか

暴言吐きながら実を取りだし、

豊作を喜び、

そしてため息をつく。

 

時間ありあまる隠居生活の我が母は

ほしい分だけいそいそ取っていき、

『きのう栗ごはんしたし、

渋皮煮も冷凍したし、

お正月用の甘露煮もつくっちゃったー☆』

とかほざくので、

背面から十六文キックを

繰り出したい衝動にかられる。

 

『蒸してスプーンで出してペーストで冷凍しよかな』

とかブツブツ言うてたら、

娘に

『それってクリクリーム、ダジャレやん。

食べたい!全部ソレで冷凍して!!』

とかほざくので、

前面から水平チョップを

繰り出したい衝動にかられる。

 

栗を剥く。

この作業への苦痛は

『今すぐ出かけなあかんときの下痢』

『好物を食べようと口を開けた瞬間の来客』

これに匹敵する。

 

『半日あったらできるやろ』と言われそうだが

そうは問屋が卸さない。

四十路半ば第二の思春期、

根を詰めてやろうものならば

肩が凝って腕が痺れ、

肩こりから歯茎が腫れて

歯痛に苦しむことになる。

 

老いの登り口、

『地味に少しずつ』が鉄則なのだ。

 

『嫌だーっ!!』とわめきながら

床を転がり回り

地団駄踏んだところで

栗どころか

サカムケすら剥けてくれない。

 

うつむき加減で窓辺に立ち

なにかの気配に振り返ると、

テーブルには

水を張った栗ボールが

静かに置かれていた…。